人気ブログランキング | 話題のタグを見る

flower child

Top

2月の徒然 ⑥

2月の徒然 ⑥_b0088205_5431030.jpg

hasselblad 500c, polaroid 669, transfered on a paper/ りんごが好きなのは、りんごが放つその象徴的な「何か」に惹かれているからなのかもしれません。

11年前の昨日、moriちゃんとわたしは日曜日の市役所に婚姻届を提出しに行きました。
地味な格好で、冴えない空の下、こそこそと裏口また非常口のような所から建物に侵入し、警備員さんですか?という雰囲気のおじさんに、おずおずと薄い紙を1枚差し出しました。
そしてその後は、定食屋に入って何事もなかったかのように安い昼定を食べました。
あぁ、結婚というものはこのようなものか、、、としみじみと感じ入るような結婚生活の始まりでした。
何しろ、もう付き合いは5年に及んでいたし、浮かれることなど今更ありませんという雰囲気でしたが、だけど、確かな実感だけがそこにはあって、今思えば、そういう、地味だけどなんとなく染み入ってくるような、そんな安心感こそがわたしたちの新しいスタートには大切だったのかもしれません。。
果たして、あのような作業でわたしたちは本当に婚姻状態にあると認められたのだろうか?としばらくの間は不安でしたが、あれこれの手続きに必要な戸籍を取りに行った時はじめて、それを確認しました。
苗字が変わったわたしの名前の下に、「妻」と記されている紙を見たこの時の方が、感動的だった気さえします。


そんなわけで昨日はバレンタインデーであり、結婚記念日であったわけですが、それはもう、やっぱり私たちらしい、ロマンチックな一日とはほど遠いような一日だったのでした。

お昼を過ぎた頃に、長引く不景気のせいで何週間後かに閉店する予定の、ダウンタウンにあるデパートに行きました。
実は、2週間前に同じようにここを覗きに来て、閉店前セールで元値より少しだけ安くなっている白い大きなソファを見つけました。
わたしたちふたりは同じものに、同じように惹き寄せられ、あれこれと思い巡らせたあとその場を去ったのでしたが、昨日、また行っちゃったんです。
少しの覚悟と、少しの期待を持って。
さて、果たして、もうとっくに売れてるだろうと思ってたあの白いソファはまだそこあり、そして2週間前よりも更に安くなった元値の半額の札をぶら下げてそこにあったのです。
買う事にしました。

さて、問題は、閉店間近のそのデパートは家具の配送をしないと言うのです。
店が教えてくれた二人の運び屋さんに電話して、可能な配送日時と値段を訊きましたが、どちらからもあんまり嬉しくない答えが返ってきたので、もういっそのことふたりで今日のうちにやっちゃおう、ということになり、デパートから荷物輸送用の車を借りれる店へ行き、早速にも手続きを済ませて大きな車に乗ってデパートへと戻りました。
同じように家具をひきとりに来た車の列に並び、その間わたしたちは各々に車中から見えるものの写真を撮って時間を潰し、1時間弱ほど待ってようやく白いソファを荷台に積み込んでもらい、家へと向かいました。

まずは古い白いソファを部屋から出して駐車場に下ろしました。(わたしたちの部屋はアパートの2階。)
それから新しい白いソファをんしょんしょと、やっとのことで車から下ろしました。
ふたりでやろうって決めたのに、根性なしのわたしはあまりの重さに泣きそうになりながら、文句と言い訳ばかりいいながら、そしてmoriちゃんはあまりに頼りないわたしの動きに合わせてずっとソファを抱えたまま次の動きを待ってくれ、そんなこんなで30分ほどかけてやっとのことで新しいソファを部屋へと搬入しました。
新しい家具を見つけるやいなや、2匹の猫は待ってましたとばかりに上に飛び乗りその心地よさを確かめている様子でした。
わたしは思わず、「猫ってラクでいいよな」って膨れっ面になってしまいました。

次に、古いソファの貰い手を慌てて探しました。
つい最近、彼女のおなかに子供がいることがわかり、結婚するべくふたりで新しい家を買って新しいスタートを切った友達に、興味はないか?と訊いてました。
どんなソファかと尋ねることもなく、彼は「ほしい」と言ったので、彼の仕事の帰りを家でまつ彼女のもとに、わたしたちの古いソファを届けました。

わたしたちの古い白いソファは私たちの結婚にあわせて買ったものでした。
わたしの亡き父と、母と一緒に家具屋さんをまわって決めた、お気に入りの白いソファでした。
結婚後、新居に遊びにきた父がそのソファにステテコ姿で腰掛け、「こら、気持ちええのぉ。」と言ったその姿はずっと忘れません。
できるならばずっと手放したくなかったソファでしたが、愛用してきた結果、ずいぶんくたびれてしまっていたので、色んな思いを込めて、11年目の結婚記念日に新調することとなりました。
幸いにも、11年前のわたしたちの若さの知人夫婦にひきとってもらえることになり、大好きだった思い入れの強いソファとこの上なく幸せなお別れをすることができました。


そんなわけで、わたしたちの結婚記念日は、非常な重労働と、擦りむき、青あざに満ちた一日でした。
結局のところ、あれこれの諸費をまとめれば、運び屋さんに依頼するのとかわらないくらいの出費、しかも体は怪我と痣だらけ、ひどい筋肉痛を被ったわけなんですけれど、わたしたちらしいお祝い一日だったと思うのです。
少し遅れた夜ごはんには日曜日恒例の手作りピザに、ビールとワイン、定番で地味だけど、滋味深いお祝いごはんを食べました。

おしまい。
by tomily | 2010-02-16 06:47 | くらし